住宅ローンは年収の何倍まで借りられるのか。この疑問は、家探しを始めた人が、最初に調べることのひとつです。ただ、借りられる額と無理なく返せる額は、同じではありません。
そこでこの記事では、住宅金融支援機構の調査で、実際の年収倍率を確認しました。そのうえで、同じ家計の架空の例で、借りる額を変えたときの返済と85歳までの預貯金・投資を比べています。
先に結論を言うと、この例では、年収の約5.4倍が上限でした。金利が5年後に2%上がると、上限は約4.3倍に下がります。
この記事でわかること
- フラット35利用者の、年収倍率と返済負担率の実際
- 借入額を変えたときの、返済と85歳までの預貯金の違い
- 手取りから逆算して、借入額を決める手順
運営者は、福岡県に住み、中古住宅(中古+改修)を検討している個人です。購入した実績や、FP・金融機関の資格はありません。詳しくは運営者情報に書いています。借りられる額の審査や、個別の相談には、お応えできません。
結論:年収の約5.4倍が上限。金利が上がると下がる
架空の家計例世帯の額面年収670万円の例で、85歳まで預貯金・投資が足りなくなる年が出ない、借入額の上限を探しました。中古+改修・変動金利1.2%・35年・自己資金300万円で計算しています。
不足しない借入額の上限(年収の何倍・架空の例)
架空の家計例。左の数字は、変動金利が5年後に上がる幅です。借入額÷世帯の額面年収で表しています。
| 金利 | 借入額の上限 | 年収の何倍 |
|---|---|---|
| 変わらない(1.2%) | 約3,640万円 | 約5.4倍 |
| 5年後に1%上がる | 約3,240万円 | 約4.8倍 |
| 5年後に2%上がる | 約2,900万円 | 約4.3倍 |
| 5年後に3%上がる | 約2,600万円 | 約3.9倍 |
架空の家計例(世帯の額面年収670万円・中古+改修・自己資金300万円)。85歳まで預貯金・投資がマイナスにならない、借入額の上限です。
同じ年収でも、金利が上がる場合を見込むと、借りられる額は大きく減ります。年収倍率だけで決めず、金利が上がったときも払えるかを、先に確かめることが大切です。
この記事の数字の出どころ(3つに分けて載せます)
お金の話では、数字がどこから来たのかが分からないと、判断のしようがありません。この記事の数字は、次の3つに分けて表示します。
| 区分 | 意味 | この記事での例 |
|---|---|---|
| 公的・一次情報 | 国や公的機関が公表している情報。出典と確認日を付けます | フラット35利用者調査の年収倍率・返済負担率 |
| 運営者の体験 | 運営者自身の体験。匿名化し、金額は丸めます | この記事では使っていません |
| 架空の家計例 | 条件を決めて作った計算例。実在の世帯ではありません | 借入額ごとの返済と、85歳までの家計 |
公的な情報は、2026年10月5日に公式ページで確認しました。調査の数字は、フラット35を使った人の平均です。借りられる額や、適切な額を示すものではありません。
実際の年収倍率:フラット35利用者の平均
公的・一次情報2025年度(2025年4月〜2026年3月)のフラット35の利用者は35,553件でした。中古住宅の利用割合は35.9%で、調査を始めた2004年度以来、初めて最も高い割合です。出典は、2025年度フラット35利用者調査(住宅金融支援機構)と調査の概要です。
| 区分 | 世帯年収 | 融資額 | 年収倍率 | 総返済負担率 |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 715.9万 | 3,357.0万 | 6.6倍 | 22.8% |
| 中古戸建 | 580.4万 | 2,402.0万 | 5.3倍 | 20.5% |
| 中古マンション | 744.6万 | 2,729.5万 | 5.6倍 | 19.7% |
| 注文住宅 | 718.9万 | 3,247.9万 | 6.9倍 | 23.0% |
| 建売住宅 | 680.0万 | 3,485.6万 | 6.9倍 | 23.9% |
出典:2025年度フラット35利用者調査(住宅金融支援機構)の主要指標の平均値。確認日:2026年10月5日。表の「万」は万円です。世帯年収は、申込本人と収入合算者の年間収入の合計です。
調査の年収倍率は、報道では、所要資金(購入などに必要な資金)を世帯年収で割った数字と説明されています(解説記事で確認)。借入額ではなく、購入にかかる資金全体で見ている点に、注意してください。
融資額を世帯年収で割ると、中古戸建は約4.1倍、中古マンションは約3.7倍でした。全体では約4.7倍です。この3つは、表の平均値から、この記事で計算した数字です。
フラット35の返済負担率の基準
公的・一次情報フラット35では、年収に占める返済額の割合(返済負担率)に基準があります。基準は、年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下です。出典は、フラット35のご利用条件です(確認日:2026年10月5日)。
基準の35%まで借りられても、家計が持つとは限りません。調査の平均は20%前後で、基準よりかなり低い水準です。
計算に使った家計の前提
架空の家計例実在の世帯ではありません。条件は、比較ツールの入力欄と対応しています。入力の順番は、ツールの使い方の記事で説明しています。
| 項目 | 想定 |
|---|---|
| 世帯 | 本人35歳(額面年収520万円・手取り400万円)、配偶者33歳(額面150万円・手取り140万円)、子ども4歳と1歳 |
| 世帯の額面年収 | 670万円(本人520万円+配偶者150万円)。年収倍率の計算に使う |
| 預貯金・投資 | 500万円(運用利回りは年1%) |
| 生活費・教育費 | 生活費は月17万円。教育費は、年齢に応じて月2万〜10万円(1人あたり) |
| 購入(中古+改修) | 改修費400万円、諸費用200万円、自己資金300万円。物件価格を変えて、借入額を変える |
| ローン | 変動金利1.2%、35年、元利均等返済 |
| 維持費 | 固定資産税10万円(年額)、火災・地震保険3万円(年額)、修繕の積立は月1万円 |
| 大きな修繕 | 200万円(12年後) |
| 住宅ローン控除 | 「既存・その他」(限度額2,000万円・10年) |
架空の家計例。物価や賃金の上昇は考えていません。比べる85歳時点は、本人が35歳から50年後です。
借入額を変えると、返済と85歳の家計はどう変わるか
架空の家計例世帯の額面年収670万円の何倍を借りるかを変えて、85歳までの預貯金・投資を計算しました。金利は、変わらない場合です。
| 年収の何倍 | 借入額 | 月の返済 | 返済負担率 | 85歳の資産 |
|---|---|---|---|---|
| 3.0倍 | 2,000万 | 5.83万 | 10.4% | 2,776万 |
| 4.0倍 | 2,680万 | 7.82万 | 14.0% | 1,642万 |
| 4.5倍 | 3,000万 | 8.75万 | 15.7% | 1,095万 |
| 5.0倍 | 3,350万 | 9.77万 | 17.5% | 497万 |
| 5.5倍 | 3,700万 | 10.79万 | 19.3% | −102万(85歳) |
| 6.0倍 | 4,020万 | 11.73万 | 21.0% | −614万(55歳) |
| 7.0倍 | 4,690万 | 13.68万 | 24.5% | −1,533万(50歳) |
架空の家計例。表の「万」は万円、返済負担率は、年間の返済額÷世帯の額面年収です。カッコ内は、預貯金・投資が足りなくなる年齢です。
5.0倍までは、85歳まで預貯金・投資が残りました。5.5倍で、85歳に足りなくなり、6.0倍では55歳で足りなくなります。7.0倍では、50歳で足りなくなります。
返済負担率が平均より低くても、足りなくなる
5.5倍の返済負担率は、19.3%です。公的調査の平均(全体22.8%・中古戸建20.5%)より低く、フラット35の基準(35%)の、約半分です。それでも、この世帯は85歳で預貯金が足りなくなりました。
理由は、返済負担率が、額面年収で見る数字だからです。実際に使えるのは、税や社会保険料を引いた手取りです。そこから、生活費・教育費・車・修繕・固定資産税も出ていきます。
返済負担率は、審査の目安としては使われます。ただ、自分の家計が持つかは、手取りと支出を入れた計算で確かめる必要があります。
金利が上がると、上限は下がる
架空の家計例変動金利が、5年後に上がる場合を試しました。上がる幅が大きいほど、借りられる額の上限は下がります。
| 年収の何倍 | 変わらない | 5年後に+2%上がる |
|---|---|---|
| 3.0倍(2,000万円) | 2,776万円 | 1,902万円 |
| 4.0倍(2,680万円) | 1,642万円 | 468万円 |
| 4.5倍(3,000万円) | 1,095万円 | −219万円(83歳) |
| 5.0倍(3,350万円) | 497万円 | −889万円(54歳) |
| 5.5倍(3,700万円) | −102万円(85歳) | −1,489万円(51歳) |
架空の家計例。数字は、85歳時点の預貯金・投資です。カッコ内は、足りなくなる年齢です。
5年後に2%上がると、4.0倍までは、85歳まで残りました。4.5倍からは、足りなくなります。金利の上がり方と、5年ルールなどの仕組みは、変動と固定の記事で説明しています。
手取りから逆算して、借入額を決める手順
年収倍率は、最初の目安にはなります。ただ、決めるときは、手取りと毎月の支出から逆算する方が合います。
- 手取りの月額と、生活費・教育費・車などの毎月の支出を出す
- 教育費が重なる年(高校・大学の時期)の、収支を確認する
- 住居費に回せる額を、余りの範囲で決める
- 金利が上がった場合(+1%・+2%)の返済額でも、払えるか確かめる
- 手元に残す現金を決めてから、頭金と借入額を決める
このうち1〜4は、比較ツールに数字を入れると確認できます。5の考え方は、頭金の記事に書きました。返済期間を変えたときの違いは、住宅ローン40年の記事に載せています。
賃貸を続ける、購入を延ばすという選択
借りられる額が欲しい家の価格に届かないときは、予算を上げるより、準備の期間を延ばす方法があります。賃貸を続けながら、頭金と手元の現金を増やす考え方です。
世帯の年収が上がる、教育費の山が過ぎるなど、数年後に条件が変わることもあります。賃貸と購入の違いは、賃貸と持ち家を比べた記事で見ています。
この記事でできないこと
この記事は、借入額を変えたときの違いを、簡易な計算で見るものです。次のことは、扱っていません。
- 金融機関の審査の結果と、借りられる額の判断
- 金融機関ごとの、返済負担率の基準
- 物価や賃金の上昇、年収の変化
- 育休・転職・病気・介護・相続
- 新築・賃貸との比較(中古と新築を比べた記事で扱っています)
目的は、借入額を増やすと何が変わるかを知ることです。実際の判断は、金融機関の説明と、自分の家計で確かめてください。
2025年度フラット35利用者調査(住宅金融支援機構)・調査の概要。
年収倍率の定義:解説記事(報道)。
返済負担率の基準:フラット35のご利用条件。
このページの計算は、簡易なものです。実際の返済額は、金融機関の条件で変わります。融資や税の相談の代わりにはなりません。
よくある質問
住宅ローンは、年収の何倍まで借りられますか?
金融機関の審査で決まるため、一律の倍率はありません。フラット35の基準は、返済負担率が年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下です。借りられる額と無理なく返せる額は、別に考えてください。
年収の5倍は、多いですか?
フラット35利用者の平均では、中古戸建で購入資金が年収の5.3倍、全体で6.6倍でした。ただ、これは平均で、適切な倍率ではありません。この記事の例では、借入が年収の約5.4倍で、85歳に足りなくなる境目でした。
返済負担率は、何%までなら安心ですか?
一律の数字はありません。調査の平均は、全体で22.8%、中古戸建で20.5%です。ただ、この記事の例では19.3%でも、85歳に足りなくなりました。教育費や生活費を入れた計算で、確かめてください。
世帯年収は、どう数えますか?
フラット35利用者調査では、申込本人と収入合算者の年間収入の合計です。金融機関によって、収入合算の扱いは違います。ペアローンと収入合算の違いは、別の記事で扱う予定です。
金利が上がると、借りられる額は減りますか?
借りられる額は、審査で決まりますが、無理なく返せる額は減ります。この記事の例では、5年後に2%上がると、上限が約5.4倍から約4.3倍に下がりました。
運営者は、FPや金融機関の資格を持っていますか?
持っていません。個人が運営しています。個別のローンの審査や、借り方の相談には、お応えできません。数字は、公的情報・運営者の体験・架空の例を分けて表示しています。
まとめ
借りられる額と、無理なく返せる額は違います。この例では、年収の約5.4倍が上限でした。金利が上がると、約4.3倍まで下がります。
次にすることは、手取りと支出から、住居費に回せる額を出すことです。借入額を変えて確かめるときは、比較ツールを使ってください。


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